令和二年の荒代掻き

代かき一回目

苗も十分に成長してくれ、いよいよ田植えのタイミングが近づいてきました。田んぼに水を入れ、一回目の荒代掻きを行いました。効果的な代かきのためには水加減が大切で、私は土8:水2が最適だと考えています。ややもすると水を入れ過ぎてしまいがちになり、そうなると古い稲わらや雑草を浮かせてしまうはめになり、本来の目的である練り込むという事が出来なくなってしまいます。

令和二年の荒代掻き
こんな感じで荒代掻きは終了。このまま数日、雑草がポツポツ発芽してくるまで放置です。

代かき二回目

令和二年の稲作-田植え以降
一回目の代かきから一週間、眠っていた雑草がポツポツと芽を出してきました。が、これが狙いです。これらの雑草をトラクターで土の中に練り込みます。

令和二年の稲作-田植え以降
雑草を練り込んだ後は田面の凹凸を均平化し二回目の代掻き(植代掻き)を終了です。

田植え

令和二年の稲作-田植え以降
最も理想とされる「出穂75日前の田植え」のためにちょうど75日前に当たる日まで待って田植えを行いました。今年も良い苗に成長してくれたおかげで、田植え作業はいたって順調でした。唯一田植え機のガソリン漏れのアクシデントに見舞われましたが、なんとか予定通り作業終了です。我が家は「への字稲作」につき、最初はゆっくり、ゆっくりの成長で大器晩成型の稲を目指します。

田植え後1週間・出穂67日前

令和二年の稲作-田植え以降
左側のお隣さんとはハッキリとした差が出てきました。グングン成長してゆくお隣さんに比べ、我が家の稲は一週間前とほぼ変わらずじっとしています。

田んぼの生き物について

令和二年の稲作-田植え以降
我が家の田んぼは常に茶色く泥水のように濁っています。主な原因は2億年前から同じ姿で生きた化石と言われる「かぶとえび」の大量発生。無数にいるカブトエビが動き回ることによって水が濁っているのですが、他にカエルやアメンボにスズメにツバメなどまさに生物パラダイス化した状態となっています。濁り水によって底まで光が届かず、雑草の発芽抑制に一役かってくれているのではと自分は考えています。
令和二年の稲作-田植え以降
いっぽうお隣の田んぼは無色透明の美しい水。しかし生物の気配はまったく無し。原因はあえて申しませんが、この差についてどの様に思われますでしょうか?収穫量が多いとか少ないとか、お米の味が美味しいとか不味いとか以上に、安心・安全な食物として最重要なことなのではないかと私は思っています。

それにしてもこのカブトエビという生き物、地球上に人類が誕生するよりも遥かに昔、恐竜がそこら辺を闊歩する時代から同じ形のまま生き続けている生物が、いまは水田という環境で繁栄しているのって凄い事だと思うし大切にしたいと思いますね。

田植え後約2週間・出穂59日前

令和二年の稲作-田植え以降
活着もしたようで少し色合いが上がってきました。ほんの少し茎も太くなったようですが、お隣さんとの差は開く一方です。

出穂50日前・雑草取りと窒素分投入

出穂50日前・雑草取りと窒素分投入
お隣さんとの差は更に開いてきました。同じ時期、同じ品種の田んぼとは思えない程見た目が違いますね。どんどん分けつしてゆく周りの稲に比べて我が家の稲は分けつこそしていないものの、その一本一本は日々確実に太くなってくれています。今年の代掻きは例年以上に丁寧に行ったのですが、それが功を奏してなのか、はたまた雨続きによる日照不足にプラスしてカブトエビのおかげなのか、更にはジャンボタニシが早くから味方してくれているのか、今年は雑草が随分少なくて助かっております。と言ってもまったく無いわけではないのでこれから何度も草取りに勤しむことになるのですが。我が家が行っている稲作方法は故井原先生が提唱された「への字稲作」で、これはチッソ肥効の推移が出穂45日前に頂点となるようにした時のグラフ上の形がひらがなの「へ」となることからそう言われているとの事です。一般的に植物が育つためには窒素・りん酸・加里の三成分が必要と言われています。しかし、水田には何もしなくてもりん酸と加里はふんだんにあふれており(昨年までのもみ殻や稲わらをすき込み、何度も雑草をすき込み、更に流れてくる用水路の水にも)、投入する必要があるのは窒素分のみという事ですので、我が家では春にかけての雑草すき込みにプラスして必要に応じ硫安単肥(JFEケミカルの硫安つぶっこ)を投入します。出穂50日前のこの日に投入しましたので5日後の出穂45日前には肥効MAXとなって一気に分けつが始まると思います。

出穂39日前・畦の草刈り

令和二年の稲作-田植え以降
窒素分投入から10日でかなり分けつが進みました。お隣さんの稲もあとしばらくで追い付き、追い越してゆくものと思われます。太くて、背が低くて良い感じです。畦草が伸びてきたので草刈りを行いました。

令和二年の稲作-田植え以降
この稲姿こそがへの字稲作の証。ガバッと開帳して風通し良く、株元まで太陽光も届くから病気知らず。農薬のお世話になることもありません。

出穂一ヶ月前・中干し開始

出穂一ヶ月前・中干し開始
いよいよ八月に入り穂が出るまでひと月となりました。背は低くとも茎の太さ・茎数でお隣りを追い抜きました。

出穂一ヶ月前・中干し開始
例年より約一週間遅めで水を抜き、中干しをスタートさせました。用水路に水がくるまでしばらく日にちがあるので乾き過ぎないための策です。

中干し六日目
遅めに水を抜き、まだ六日目ですがしっかり乾いています。遅めの梅雨明けのあと八月に入ってからとゆうもの連日の灼熱地獄のような天気で夕立もまったく無し。乾き過ぎることを避けるために遅めに水を抜いて正解でした。用水路に水が来るのは二日後です。本当は今すぐにでも水を入れてあげたいのですが、決まり事ですから自分のところだけ勝手な事はできません。農業も稲作も地域社会の連携で成り立っています。

令和二年の稲作-田植え以降
ようやく水が入ってホッとしました。昨年は少し干し過ぎた感があったけど、今年はちょうど良かった感じがします。出穂まで約20日、どうか良い穂が出てくれますように。

出穂を確認

令和二年の稲作-田植え以降
稲にとってのお産である出穂が始まりました。なぜか予定より6日ほど早い出穂となりました。穂が出るのが早い者、遅い者。早い茎、遅い茎があり、後から後から穂が出てきます。これから特にカメムシなどの害虫が寄り付かないようにこまめな雑草刈りをしなくてはなりません。忙しくなってきました。

令和二年の稲作-出穂
8月末、ほぼすべての穂が出そろいました。これから10月の稲刈りに向けて登熟が進んでゆきます。

周りで病気が大発生

周りで病気が大発生

ウンカによる被害田
ここ最近全国的に新聞やニュースでも取り上げられてますが、奈良盆地でも稲の病気が多発しています。7月末までの長梅雨に加えて猛暑となった夏の影響だと思われますが、イモチ病・モンガレ病に害虫であるウンカとまさに病気と害虫のオンパレード状態。幸い我が家の稲たちはいまのところ踏ん張ってくれていますが、お隣さんの田んぼとは細いあぜ道を隔てているだけですので、いつ移ってくるかとヒヤヒヤドキドキしながら見守っています。農協さんや地区のベテラン農家の方からは予防に薬を撒くよう指導されますが、それをしてしまったらこだわりの農業は終わりです。もし、万が一我が家のお米も病気になったら・・・今年の収穫はあきらめます!
お米を予約して下さっている方々には申し訳ないのですが、そんな覚悟で進んでいこうと思います。

ウンカによる被害田
被害にあってる田んぼの持ち主さんらは家族総出で殺虫剤をふっておられます・・ が、収穫手前になって薬をふられたお米ってどうなんでしょうか?採算のことはわかるけど人が口にする食材としてこれでいいのかって私は思います。農業の闇の部分を感じます。

稲刈り10日前

稲刈り10日前
10月に入り稲もかなり色付いてきました。周辺の田んぼでは病気に害虫にとえらいことになっていますが、幸い我が家は無傷で稲刈りまでたどり着けそうです。稲たちとお天道様に感謝しながらあと10日。ぼちぼちコンバインと乾燥機、籾摺り機の事前整備を始めます。

収穫・稲刈り

令和二年の稲作-田植えから収穫まで
本当はもう少し後日から始めたかったのですが、周辺のウンカ被害がひどいので予防策として前倒しで刈りはじめました。

令和二年の稲作-田植えから収穫まで
田面も程よく乾いて良い感じです。

令和二年の稲作-田植えから収穫まで
トラブル無しで一回目の稲刈りを終えることができました。これから刈り取った籾の乾燥、臼引きへと進んでゆきます。

籾の乾燥とうす引き、袋詰め

籾の乾燥とうす引き
一般に一昼夜で完了させる乾燥ですが、我が家では3日から4日をかけて、じわっとゆっくりゆっくり乾燥させます。お米の味って6月の梅雨時を過ぎたら落ちてくるものですが、我が家では乾燥の工夫で年中美味しいお米を目指しています。

籾の乾燥とうす引き
規定の水分量まで乾燥させた籾はよく冷やして外気温と同じ温度まで下がってからうす引き(もみ殻取り)を行います。作業中はすごいホコリで、しっかり口鼻をふさがないと喉や鼻の粘膜がやられます。

籾の乾燥とうす引き
籾摺り機から出てきたお米は更に選別された後、30Kgずつ袋詰めしてゆき玄米の完成となります。秋の収穫期は稲刈り・乾燥・うす引き・袋詰めをひたすら何度も繰り返す毎日となります。腰痛に気を付けないと・・。

お米の引き渡し

我が家でつくったお米は農協にも、買い取り業者にも一切販売していません。自宅で消費する分以外はすべて個人販売。知人と友人以外はこのブログを通じてご希望された方々にお分けしております。なにぶんお母さんと二人だけで行う稲作につき、作付け面積が少ないのですべてのご要望にお応えできないのが心苦しくもあり、悩みでもあります。もし私がつくるお米にご興味を持たれた方はこちらからどうぞ。

令和二年のトビイロウンカ大被害について、私なりの考察

今年は西日本を中心に日本全国でトビイロウンカによる大被害が発生していることはニュースや新聞報道などでも数多く伝えられています。幸い私が稲作している田んぼについてはまったくの無被害だったのですが、まわりの田んぼを見渡してみると、円形の立ち枯れから幾日もしないで田んぼ全体がまっ茶茶に枯れてしまっている所と、私と同じくまったく被害の無い田んぼにハッキリ分かれていました。双方の田んぼが隣り合わせでたった数十センチの畦しか隔てていないにもかかわらずまったく違う様相になっているのです。あくまでも奈良県大和郡山市にある私の周辺に限ったことかも知れませんが、私なりの考察を行いました。
令和二年のトビイロウンカ大被害について、私なりの考察
近隣地区全体でのおおまかな傾向としては下記の通り。

  1. 田植えの時期が早かった田んぼほど被害がひどい
  2. 初期成育旺盛な田んぼほど被害がひどい
  3. 無農薬栽培を行っている田んぼは被害なし又は僅少

1と2についてはタイミングの差であると考えられます。田植え時期にベトナムや中国からのジェット気流に乗ってやってくるウンカ達に見つかるかどうか。ようするにウンカ達に住みつかれるか否かの差であると思われます。周辺がまだ田植え前なのに、既に早くから苗が植わっている田んぼは当然目立つし選ばれやすい。初期成育旺盛ということは葉の色も濃く、葉の数も多い。見た目に派手な田んぼもウンカ達に選ばれやすいと言えます。

いっぽう3については天敵の有無の差であると推測されます。ウンカの天敵と言えばスズメにアメンボ、トンボにカエルにクモ。そして忘れてはならないのが糸片虫、いわゆるハリガネムシみたいな虫です。通常栽培を行う農家は害虫の防除にせっせと殺虫剤を撒くわけですが(特に今年は早い時期から農協より通達が回っていたので、例年以上に皆せっせと撒かれていた)、この行為こそがウンカにとっての天敵となる生き物まで殺してしまうわけで。もちろんスズメも寄り付かない。さらに悪いことに海外で農薬耐性をつけたウンカに日本の殺虫剤は効かないようで、天敵のいなくなった田んぼでウンカ達はのびのびと増殖を繰り返す。いっぽう無農薬栽培を行っている田んぼは生き物いっぱい。もちろんウンカ達の天敵もいっぱいいて、たとえ住みついたとしても糸片虫に寄生され弱らされた挙句、次々と食べられてしまうので増殖はできない。

以上が私なりの考察ですが、ウンカ被害は今年で終わりではなく来年も再来年も更に農薬耐性を高めたウンカ達が飛来する可能性は高いと考えるべきで、そのための対策としてはやはり。
1遅く植える・2初期肥料をしない・3農薬を使わない

結局は自身が今行っている「無農薬への字稲作」ではないか!ただ、田植えのタイミングについては来年からはもっと遅く。今よりも更に1週ほど後ろにズラして植えることとしよう。

でももっと大事な事。病気にも害虫にも負けないお米づくりのために一番大切なのは・・原点の原点。やっぱり強い苗に尽きます。太くて背が低い、恐ろしいほどに元気な根を持ち、ガチガチに硬い針金のような茎を持つガッチリした健苗を育てて植えることが何より重要であると再認識しました。大昔からある言葉で「苗半作」は今の時代でも正解なのです。